夜中の足音
夜中、部屋の中を歩く音で目が覚める。
暗い。
時計を見る前にわかる。
ヤックルだ。
歩き回る音。
落ち着かない気配。
排泄したいときの、あのソワソワ。
声を出すわけではない。
ただ、部屋の中を行ったり来たりする。
それだけで伝わってくる。
ああ、外に行きたいんだなと。
眠い。
身体はまだ完全に眠っている。
それでも布団を出る。
部屋は暗いまま。
まだ夜のまま。
外の空気
玄関を開けると、空気が違う。
真冬の夜は、極寒だった。
でも不思議なことに、
寝起きの身体は少し温かい。
最初だけは、外の空気が気持ちよく感じる。
その時間は長くない。
ヤックルは歩き始める。
足は悪くて、普段はヨボヨボ歩いているのに、
排泄したいときだけ、シャカシャカ歩く。
地面の匂いを嗅ぐ。
止まる。
また歩く。
そしてまた止まる。
なかなか出ない。
てんかんを発症してから、
神経がおかしくなったのかもしれない。
排泄のタイミングが、うまくいかないことが増えた。
気がつくと、
外で30分くらい立っていることがある。
その頃には、もう震えている。
寒い。
なんでこんな辛い思いをしないといけないんだろう。
そんなことを思っている自分がいる。
深夜という時間
深夜の外は、とても静かだった。
車も走らない。
人もいない。
社会の音が、完全に止まっている。
その静けさの中に立っていると、
世界から切り離されたような気持ちになる。
みんな、今ごろ布団の中で
ぐっすり眠っているんだろうな。
細切れじゃなくて、
朝までまとめて眠れる生活。
それ、いいな。
そんなことを思う。
その瞬間、
寂しさみたいなものが少しだけ膨らむ。
家に戻ると
排泄が終わると、
ヤックルは落ち着く。
ジーナは最初からテンションが高い。
外に出ること自体が嬉しいらしい。
尻尾を振ってついてくる。
犬にとっては、
夜中でも朝でも関係ない。
ただ一緒に外に出る時間。
それだけで楽しそうだった。
家に戻ると、
私の朝はもう始まっている。
白湯を飲んで、
ストレッチをして、
そのままジムに行く。
この生活が始まった理由
この生活は、ここ半年くらい。
きっかけは、ヤックルのてんかんだった。
発作を起こしてから、
生活のリズムが少し変わった。
排泄のタイミングも変わった。
夜中に起きることが増えた。
だから、起きる。
それだけだった。
崩れる日
この生活は、
小さな規律の上に乗っている。
夜早く寝る。
朝早く起きる。
それが崩れると、全部崩れる。
旦那の帰宅が遅くて、
自分の就寝が遅くなる日。
寝不足になる日。
ヤックルが発作を起こした日。
そういう日は、
生活がうまく回らない。
身体も、心も、乱れる。
それでも朝は来る
夜中に震えながら外に立っているとき、
正直、つらいと思うことはある。
みんな、よく眠れていいな。
そんなことを思う夜もある。
それでも、朝は来る。
ヤックルは落ち着いて、
ジーナは楽しそうで、
私はジムに向かう。
特別な理由はない。
ただ生活が続いているだけだった。
たぶん、
それでいいんだと思う。
この続きに、もし興味があれば
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・自分との約束を守れない人間だと思っていた
このブログを書いている人のこと
神奈川県在住。
犬と暮らしながら、GIRASOLという名前で、
パラコードのドッグギアと、犬のための音を作っている。
元フィットネスインストラクター。
仕事として人と関わる時間が続く一方で、
刺激や情報の多さよりも、
静かで、管理できる距離感の暮らしを求めるようになった。
犬と暮らすようになり、
生活のリズムや優先順位が大きく変わった。
安全であること。
安心できること。
毎日繰り返しても負担にならないこと。
GIRASOLは、
そうした生活の中で自然に残った基準から生まれている。
派手さより、長く使えること。
説明より、使ったときの違和感のなさ。
その感覚を信頼しながら、
道具や音を、静かに形にしている。


