運気を上げるには、掃除をするといい。
そんな言葉を、本を紹介しているYouTubeで聞いた。
家の中は、自分の思考を表しているらしい。
そう言われたとき、少しだけ胸の奥がざわついた。
特別に散らかっている家ではない。
むしろ、物は少ないほうだと思う。
それでも、その言葉がどこかに引っかかっていた。
朝、窓を開けた。
寒い日だった。
外の空気は冷たくて、部屋の空気とすぐに入れ替わる。
換気をしながら、なんとなく動き始めた。
まずはLDK。
床に置いてあったものを元の場所に戻す。
テーブルの上を整える。
棚の上の埃を拭く。
一箇所が綺麗になると、
さっきまで気にならなかった場所が目に入る。
キッチンのパントリーを開ける。
中を全部出して、棚を拭く。
並びを整える。
気づくと、水回りまで手をつけていた。
寒い日だったのに、体が熱くなっていた。
腕を動かしながら、
体の内側から体温が上がっていく。
掃除は不思議だ。
動いているだけなのに、体がどんどん起きてくる。
途中から、頭の中が静かになっていた。
考え事が消える。
無。
というより、
「無双モード」という感じに近い。
手は止まらない。
次にやることが自然と見える。
判断も迷いもない。
ただ、動いている。
洗面所を拭き終えた頃、
空気が変わっていることに気づいた。
もちろん、空気清浄機の数字が変わったわけではない。
それでも、部屋の空気が軽い。
床の上に、
意味のない物が置かれていない。
視界の中に、
雑然とした塊がない。
それだけで、頭の奥がすっと静かになる。
家の中は、思考を表している。
YouTubeで聞いた言葉が、
少しだけ腑に落ちた気がした。
散らかっている物は、
ただの物ではない。
「あとでやる」
「とりあえず置く」
「今はいいや」
そういう小さな未処理が、
部屋のあちこちに残っている。
それを一つずつ片付けていくと、
頭の中の未処理も減っていく。
そんな感覚があった。
掃除を終えた頃には、少し疲れていた。
体はちゃんと疲れている。
でも、妙に元気だった。
まだできそうだ、という感じ。
もっと物を減らしたい。
そんな考えが、自然に浮かんだ。
物が少ないほど、
視界は静かになる。
視界が静かになるほど、
思考のノイズも減る。
脳のリソース。
そんな言葉を思い出す。
毎日、人はたくさんの判断をしている。
どの服を着るか。
どこに置くか。
いつやるか。
小さな決定が積み重なって、
気づかないうちに脳は疲れていく。
物が多いと、
その判断が増える。
物が少ないと、
考えることが減る。
掃除をしているとき、
頭の中が無になる理由は、
もしかするとそこにあるのかもしれない。
部屋が整うと、
運が良くなる。
それが本当かどうかは、まだわからない。
でも、少なくとも一つだけは確かだった。
部屋が整うと、
頭の奥が静かになる。
そして、その静けさは、
思っていたよりも気持ちよかった。
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このブログを書いている人のこと
神奈川県在住。
犬と暮らしながら、GIRASOLという名前で、
パラコードのドッグギアと、犬のための音を作っている。
元フィットネスインストラクター。
仕事として人と関わる時間が続く一方で、
次第に、刺激や情報の多さよりも、
静かで、管理できる距離感の暮らしを求めるようになった。
犬と暮らすようになり、
生活のリズムや優先順位が大きく変わった。
安全であること。
安心できること。
毎日繰り返しても負担にならないこと。
GIRASOLは、
そうした生活の中で自然に残った基準から生まれている。
派手さより、長く使えること。
説明より、使ったときの違和感のなさ。
その感覚を信頼しながら、
道具や音を、静かに形にしている。
この文章を書いているときの私は、
掃除のあとで少し体が温かいまま、
犬たちが静かに寝ている部屋で、
まだ整った空気を吸いながらキーボードを打っている。


