暗い時間に目が覚めていた。
というより、起こされていた。
ヤックルが落ち着かない足取りで家の中を行き来している。
床を踏む音が小さく続いて、時々こちらを確認する気配がある。
排泄がしたいのだろう。
時計を見ると、だいたい2時か3時。
まだ夜のままの時間だった。
外は真っ暗で、家の中も静かだったけれど、
ヤックルだけは落ち着かずにそわそわしている。
仕方なく布団から出る。
この瞬間の空気は、毎回少し冷たい。
夜の温度が残っているような、静かな冷え方。
ジーナは私が起きてきたことにすぐ気づく。
それだけで嬉しそうに尻尾を振って、
まだ完全に目が覚めていない顔のまま近づいてくる。
この瞬間だけを見ると、
この家の朝はとても歓迎されているようにも見える。
ヤックルはそれどころではない。
落ち着かない足取りのまま、
「早く外に行こう」という空気を全身から出している。
犬と暮らすと、
人間の都合はあまり関係なくなる。
朝も夜も、あまり意味を持たなくなる。
キッチンで白湯を飲む。
まだ身体は完全に起きていない。
胃の奥にゆっくり温度が入っていく感じだけがある。
それから犬の散歩。
犬の世話。
ストレッチをして、
そのままジムへ向かう。
身体を動かしているうちに、
夜と朝の境目が少しずつはっきりしてくる。
家に戻って朝ごはんを食べて、
ブログを書く。
洗い物をして、
風呂に入って、
掃除と洗濯をする。
こうして書くと、
ただの生活の順番だった。
特別なことは何もない。
ただ、この順番があると、
身体の中が静かに整っていく感覚がある。
半年前の夏の終わり、
私は仕事を辞めていた。
それまで人と関わる時間が多かった。
毎日人と会って、
声を出して、
何かを提供する生活だった。
それがなくなったあと、
生活はかなり静かになった。
友達に会うのも、
月に一度あるかないか。
情報の取り方も変わった。
流れてくるものを眺めることは、
ほとんどなくなった。
必要なものだけを探しに行く。
そんな感じに変わっていた。
外の世界に振り回されたくない。
その感覚が、
どこかにあった。
もちろん朝はいつも整っているわけではない。
ヤックルに起こされる日もある。
朝のてんかんで
身体の感覚が少し変な日もある。
前の日に旦那の帰りが遅くて
寝不足のまま朝になる日もある。
完璧な朝ではない。
むしろ、
思った通りにいかない朝の方が多い。
それでも、
朝の時間があると、
身体の中に
一本の軸のようなものが戻ってくる。
ヤックルが朝を迎えていること。
それを確認できること。
それだけでも
少し安心している自分がいる。
もしこの生活が崩れたら、
何が怖いのか。
考えてみると、
たぶん規律が壊れることだった。
規律が壊れると、
身体も崩れる。
身体が崩れると、
自分の輪郭も曖昧になっていく。
自分を保つものが、
少しずつ薄くなる。
それが怖いのだと思う。
静かな朝を守ることは、
何か特別な目標ではない。
ただ、
自分を壊さないための
小さな構造のようなものだった。
だから私は、
少しだけ世界から距離を取った。
世界が嫌いになったわけではない。
ただ、
この静かな時間を壊さない距離に
立っていたかっただけだった。
この続きに、もし興味があれば
GIRASOLの音は、
こういう朝の静けさの中で作っている。
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このブログを書いている人のこと
神奈川県在住。
犬と暮らしながら、GIRASOLという名前で、
パラコードのドッグギアと、犬のための音を作っている。
元フィットネスインストラクター。
人と関わる仕事を続けているうちに、
刺激の多さよりも、
静かで整った生活を求めるようになった。
犬と暮らすようになってから、
生活のリズムや優先順位は大きく変わった。
安全であること。
安心できること。
毎日繰り返しても負担にならないこと。
GIRASOLは、
そうした生活の中で自然に残った基準から生まれている。
派手さより、長く使えること。
説明より、使ったときの違和感のなさ。
その感覚を信頼しながら、
道具や音を静かに形にしている。


